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「長期雇用で業務プロセスは属人化、複雑化する」

「日本企業の強みは長期雇用だ」と、以前から言われてきました。

そう言われてきた理由はいくつかありますが、一つには長い時間をかけて企業運営に必要なナレッジを社員が学び、共有されるから、ということが挙げられます。

長期雇用の中で、社員は様々な部門をローテーションで経験するために、部門間のコミュニケーションも円滑に進むことで業務の生産性が上がりやすく、結果として企業競争力が強化される。だから、「長期雇用が強み」というストーリーでした。

しかし近年、派遣社員の活用や社員の高齢化によって、「長期雇用が強み」のストーリーが実現されていないケースが多くみられます。その代表例が、「業務プロセスのブラックボックス化」です。

企業内ナレッジの中には、業務の流れを示す業務プロセスに対する理解が含まれますが、その業務プロセスは、特定の担当者が長年担当する中でアレンジが繰り返され属人化しているケースが大半です。

時間を追うごとにどんどん複雑化していき、最終的には他人から見るとブラックボックスになっているケースが多々あります。

「派遣社員活用が業務プロセス見直しを難しくする」

業務プロセスがより複雑化すると、以前より業務工数が膨らみます。担当者だけで現場が回らなくなった場合には、膨らんだ工数分を内部のプロパーではなく派遣社員で対応することがほとんどです。

ただ、派遣社員の中には大変優秀な人材もいるので、短期間で複雑な業務を学習し、結果として対応できるケースも多いでしょう。

しかし、派遣社員は複雑化した業務プロセスを見直す役割は期待されていません。現状の複雑化した業務プロセスを温存したまま、業務を進めますから、派遣社員に依存していくことになるのです。

「派遣社員への依存から抜け出すためいよいよDXの出番」

派遣社員による業務対応が根本的な解決にならないことは誰の目に見ても明らかです。そこで、いよいよDX。「最新のITを活用して抜本的にプロセスを変革だ!」となるのが当然の流れです。

DXの流れになった場合、大抵の場合はITベンダーを選定し、業務分析が行います。

IT業界のトレンドとして、まずはSaaSなどのパッケージサービスが推奨されますが、複雑化した業務プロセスはパッケージソフトの標準プロセスと100%合致することはまずありません。

このような場合は、パッケージを現状の複雑化した業務プロセスに合うようにカスタマイズするか、業務プロセスをBPRで抜本的に見直し、シンプルにした後でパッケージに乗りやすくするか、の二者択一になります。

「ITベンダーとユーザー企業の掛け合いでカスタマイズは肥大化」

ITベンダーの仕事はパッケージの導入なので、要件定義を目的に複雑な業務プロセスの現状を聞き取りし、聞き取った内容にフィットするよう、カスタマイズの提案を行うのが通常です。カスタマイズ領域が増えた方が、ユーザー企業への提示見積もりも高くできる、という算段ももしかしたらあるかもしれません。

ユーザー企業の業務担当者も、自身で長年習熟してきた業務プロセスなので、複雑化した業務にはすべて理由があることを力説。現状の業務プロセスの正しさが主張され、温存されることが多くなります。(【BPR For DX】Vol.1「対話から共感と発想を生み、DXにつなげる」)

その結果、ITベンダーとユーザー企業が共鳴し、パッケージ提案のはずが、カスタマイズ領域がどんどん肥大化しスクラッチとあまり変わらない見積もりに。

ここまでくれば、DXプロジェクト炎上の土壌は出来上がったと言えるでしょう。

このような状況を回避する唯一の方法は、当社が繰り返しお伝えしている、DXプロジェクトの前段でBPRを着実に実行し業務プロセスの適正化を図ることです。

「複雑な業務に複雑なIT」ではなく「シンプルな業務にシンプルなIT」。ビルゲイツの名言(【BPR For DX】Vol.2「DXに関するビルゲイツの名言」)をここで再度読者の皆さんに思い起こして頂きたいと思います。

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